実際の相談事例を元に、様々なお悩みを司法書士清水敏博のコラムでご紹介します。

2026年03月01日

なぜ、遺言者の想いは伝わらなかったのか

遺言・贈与
はじめに
こんにちは。司法書士の清水です。
遺留分侵害額請求のご相談を受けていると、よくこんな言葉を耳にします。
「親は、どうしてこんな遺言を書いたのでしょうか」遺言書は確かに存在する。
しかし、その遺言に込められた想いが、相続人に届いていない。
そんなケースが少なくありません。

遺言書には「理由」まで書かれていないことが多い
多くの遺言書には、「誰に、何を、どれだけ相続させるか」は書かれています。
一方で、「なぜそう決めたのか」「どんな気持ちで判断したのか」まで丁寧に記されている遺言は、実は多くありません。
遺言者の中では納得のいく理由があっても、書かれていなければ、それは伝わらないのです。

遺言者が語らなかった前提条件
実務で感じるのは、遺言者が次のような前提を「言わなくても分かる」と思っていることが多い、という点です。
・長年面倒を見てくれたから
・経済的に余裕があると思っていたから
・これまで十分支援してきたつもりだったから
しかし、相続人の側は、その前提を共有していないことも少なくありません。

沈黙は、ときに誤解を生みます
「言わなくても分かるだろう」「今さら説明する必要はない」そうした沈黙が、結果として「差別された」「見放された」という受け止め方につながってしまうことがあります。
遺言者の想いが深いほど、説明が省かれてしまう。
これはとても皮肉なことです。

家族関係の積み重ねが、最後に表面化する
遺留分トラブルは、遺言を書いた瞬間に生まれるものではありません。
多くの場合、何十年もの家族関係の積み重ねが、相続という場面で表に出てきます。
・昔からの不公平感
・言えなかった不満
・埋まらなかった距離感
遺言は、その引き金になってしまうことがあるのです。

付言事項は「気持ちを伝えるための場所」
遺言には、法的効力のない「付言事項」を書くことができます。
この部分にこそ、遺言者の想いを言葉にする意味があります。
・感謝の気持ち
・配分に差をつけた理由
・家族への願い
これらがあるだけで、相続人の受け止め方は大きく変わることがあります。

遺言は結果だけでなく過程も大切です
あいおい事務所では、遺言書作成の際、「どんな財産配分にするか」だけでなく、「どう伝えるか」「誰にどう届くか」を重視しています。
遺言は、亡くなった後の手続きのためだけでなく、家族関係を穏やかに終えるための準備でもあるからです。

PageTop