2025年12月16日
「長男に全部」遺言が招く、想定外の家族トラブル

はじめに
こんにちは。司法書士の清水です。遺言のご相談の中で、昔から一定数あるのが、いわゆる「財産はすべて長男に相続させる」という内容の遺言です。
遺言者としては、ごく自然な感覚で決めていることが多いのですが、実はこの形が、思わぬ遺留分トラブルにつながることがあります。
遺言者にとっては「合理的な判断」
遺言を書かれる方のお話を伺うと、決して偏った考えではありません。・同居して生活を支えてくれた
・事業や家を守ってくれている
・遠方の子には迷惑をかけていない
・昔から「家は長男が継ぐ」という意識がある
遺言者の中では、むしろ公平に考えた結果ということも多いのです。
受け取る側は、まったく違う景色を見ています
ところが、財産を受け取らない側の相続人は、こう感じることがあります。・自分は最初から対象外だったのか
・これまでの関係は何だったのか
・一言も説明がなかった
・最後に線を引かれた気がする
遺言者に悪意がなくても、受け取る側は「排除された」と感じてしまうことがあるのです。
ここで遺留分の問題が現実化します
「長男に全部」という遺言は、法律上、他の相続人の遺留分を侵害しているケースが少なくありません。その結果、
・遺留分侵害額請求をするかどうか悩む
・兄弟間で気まずい空気が生まれる
・話し合いができず、専門家を介することになる
といった流れに進んでしまうことがあります。
争いたいわけではない、でも納得できない
実際に請求を検討される方の多くは、「争いたいわけではない」とおっしゃいます。ただ、何も言わずに受け入れてしまうと、自分の中で整理がつかない。
その気持ちが、請求という形になることがあります。
財産の配分以上に、「説明」が大切になる
同じ内容の遺言でも、・生前にきちんと話をしていた
・理由が丁寧に書かれていた
・他の相続人への配慮が示されていた
こうした場合には、大きなトラブルにならないことも少なくありません。
つまり問題は、配分の数字そのものより、どう受け止められるかにあるのです。
今の時代、「昔ながらの感覚」だけでは難しいことも
かつては当たり前だった「家督的な考え方」も、現在の家族関係や価値観の中では、そのまま受け入れられないことも増えています。家族の形が多様になった今、遺言もまた、時代に合わせた配慮が必要になってきています。
遺言は引き継がせるためだけのものではありません
あいおい事務所では、財産を誰に渡すかという視点だけでなく、残された家族がどう受け止めるかを大切にしています。遺言は、単なる承継の手段ではなく、家族への最後の意思表示でもあるからです。
