実際の相談事例を元に、様々なお悩みを司法書士清水敏博のコラムでご紹介します。

2025年12月11日

生前贈与は本当に相続対策になりますか?

はじめに
こんにちは。司法書士の清水です。
相続対策の話になると、よくこんなご相談があります。
「毎年110万円ずつ子どもに贈与しています」「とりあえず生前贈与をしておけば、相続対策になりますよね?」
たしかに、生前贈与は昔からよく知られている相続対策のひとつです。
ですが、実務の現場に立っていると、「やっていて良かった贈与」と「逆に困ってしまった贈与」この両方を見てきました。
実は、生前贈与はやれば安心という単純なものではありません。

とりあえず贈与、が失敗につながることも
たとえば、こんなケースがあります。
「税金対策になると聞いて、長男に毎年110万円ずつ渡していた」「通帳も長男名義に変えていたので安心していた」
ところが相続のとき、他の兄弟からこう言われました。
「それって長男だけ得してない?」「そんな話、聞いてない」
結果として、かえって不公平感が生まれ、家族関係がギクシャクしてしまいました。
贈与はお金が動くだけに、気持ちの問題がとても大きく出る対策なのです。

税金だけ見ていると、本質を見失う
生前贈与というと、「相続税を減らすためのテクニック」のように語られることがあります。
もちろん税務上の効果は大切です。
ただ、相続対策の目的は、税金を減らすことだけではありません。
・家族間で納得できるか
・将来トラブルにならないか
・本当にその渡し方がベストか
ここを考えずに進めると、「節税はできたけど、家族関係が悪くなった」という本末転倒な結果になりかねません。

こんな贈与は要注意です
実務上、注意したいのはこんなケースです。
・口約束だけで贈与契約書がない
・親が通帳や印鑑を管理している(名義預金扱いになる)
・一人の子どもにだけ偏っている
・不動産や大きなお金を安易に渡してしまう
これでは、税務上も法律上もトラブルの火種になります。
「贈与したつもり」が、実は「贈与と認められない」ということもあるのです。

大切なのは「なぜ贈与するのか」
生前贈与は、やり方次第ではとても良い対策になります。
・子どもの住宅取得資金を応援したい
・早めに資産を移して管理を任せたい
・将来の相続をシンプルにしたい
こうした目的がはっきりしている贈与は、家族にも理解されやすく、トラブルになりにくいものです。
大切なのは「いくら渡すか」よりも、「なぜ渡すのか」です。

あいおい事務所が生前贈与を慎重に考える理由
あいおい事務所では、「とりあえず贈与しましょう」と簡単にはお勧めしません。
司法書士を中心に、弁護士・税理士・不動産鑑定士など11の士業が連携するLTRコンサルティングパートナーズ、さらに暮らしや不動産の実務まで支えるオーケストライフと共に、
・税務面
・法律面
・家族関係
・将来の暮らし
すべてを整理したうえで、「このご家庭にとって本当に意味のある方法か?」を一緒に考えます。

生前贈与は手段であって目的ではない
生前贈与は、あくまで数ある選択肢のひとつです。
万能薬ではありません。
相続対策の本当のゴールは、家族が安心して、穏やかに次の世代へバトンを渡せること。
その視点を忘れなければ、自然と「わが家に合った方法」が見えてきます。

PageTop