実際の相談事例を元に、様々なお悩みを司法書士清水敏博のコラムでご紹介します。

2026年07月31日

なぜ高齢者は訪問販売を断れないのか?司法書士が現場で感じること

訪問販売
はじめに
こんにちは!司法書士の清水です。
最近、高齢者の訪問販売トラブルやリフォーム契約トラブルの相談が増えています。
ニュースなどを見ると「なぜそんな高額な契約をしてしまったのか」「なぜ断れなかったのか」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、実際に現場でご本人のお話を聞いていると、単純に「騙された」で片付けられないケースも多くあります。
今回は、司法書士として後見相談や高齢者支援の現場で感じる「高齢者が訪問販売を断れない理由」についてお話したいと思います。

「断るのが悪い」と感じてしまう世代
高齢者の方と接していて感じるのは、とても真面目で相手に気を遣う方が多いということです。
特に70代、80代の方は、
・せっかく来てもらったのに悪い
・話だけでも聞かないと失礼
・強く断るのは申し訳ない
という感覚を持たれている方が少なくありません。
訪問業者側も、その心理をよく理解しています。
最初は世間話から入り、
・近くで工事してまして
・お一人ですか?
・この辺り、最近空き巣も多いですからね
など、少しずつ距離を縮めていきます。
そして、不安を煽ったり、親切に振る舞ったりしながら契約につなげていくケースがあります。
ご本人からすると、「押し売り」というより、親切に相談に乗ってもらった感覚になっていることもあるのです。

「自分はまだしっかりしている」という気持ち
もう一つ多いのが、「自分はまだ大丈夫」というお気持ちです。
これは悪いことではありません。むしろ、自立して生活してこられた証でもあります。
ただ、年齢とともに、
・判断に時間がかかる
・比較検討が難しくなる
・不安を感じやすくなる
・話を断るエネルギーが減る
・細かい契約内容を確認しなくなる
といった変化が少しずつ起きることがあります。
しかし、ご本人はその変化を自覚しにくいため、「自分で判断した」「必要だと思った」と感じています。
実際の相談でも、
・屋根が危ないと言われて心配になった
・今すぐ工事しないと雨漏りすると言われた
・感じの良い人だった
というお話はよくあります。

独居と住まいの問題はつながっています
特に注意が必要なのは、一人暮らしの高齢者です。
独居の場合、
・相談相手が少ない
・誰にも確認せず契約できてしまう
・訪問者との会話が増える
・孤独感から話を聞いてしまう
といった状況になりやすく、結果としてトラブルにつながることがあります。
また、古い住宅にお住まいの方ほど、下記のような「住まいの不安」を抱えていることも多く、そこにつけ込まれるケースもあります。
・屋根
・外壁
・水道
・シロアリ
・庭木

被害者という認識が薄いことも多い
高齢者トラブルの難しいところは、ご本人が「被害に遭った」と思っていないケースが多いことです。
例えば、
・工事はしてくれたから
・自分が頼んだことだから
・自分にも落ち度がある
と考え、家族にも相談しないまま終わってしまうことがあります。
そのため、通帳を確認して初めて発覚したり、ケアマネや訪問看護師が家の様子を見て気づいたりするケースも少なくありません。

司法書士清水のコメント
私は、後見相談や高齢者支援の現場で「もっと早く周囲が気づけていれば」と感じることがあります。
ただ、高齢者の方は決して弱いわけでも、判断できないわけでもありません。長年、自分の力で暮らしてこられた方ほど「人に頼る」「相談する」ことに抵抗がある場合もあります。
だからこそ大切なのは、本人を否定しないことだと思っています。
なんでそんな契約したの!ではなく「不安だったんだね」「心配になったんだね」と受け止めながら、一緒に現実的な対策を考えていくことが重要です。
後見制度も、単に財産を管理するためだけではなく、安心して暮らし続けるための支援という視点で考えることが大切だと感じています。
あいおい事務所では、法律や制度だけでなく、その方の暮らしや住まい、人とのつながりも含めて、一緒に考える支援を大切にしています。

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