実際の相談事例を元に、様々なお悩みを司法書士清水敏博のコラムでご紹介します。

2026年05月17日

親の物忘れが進行中…「様子見」でよい時期と危険なサイン

遺言・贈与
はじめに
こんにちは。司法書士の清水です。
「最近、同じ話を何度もするんです」「さっき渡した書類をもう忘れていて…」「だんだん物忘れが進んできている気がして心配で…」
親御さんの変化に気づいたとき、そろそろ成年後見制度を考えた方がいいのかなと不安になる方がとても増えています。
でも実は、物忘れ=すぐ後見制度、ではありません。
多くのご家庭が、しばらくは「様子見」で大丈夫な時期を過ごしています。
今日はその「見極めポイント」をお伝えします。

物忘れは、誰にでも起こる自然な変化
まず前提として、年齢とともに物忘れが増えるのはとても自然なことです。
・鍵をどこに置いたか忘れる
・同じ話を何度もする
・支払い日をうっかり忘れる
こうした変化だけで、すぐ制度が必要になることはほとんどありません。
私の実感では、8〜9割くらいのご相談は「まだ後見は早いですね」とお話しするケースです。

【ケース】実際は「様子見」で十分だったご家庭
80代のお母さまと同居している娘さんからのご相談。
・冷蔵庫に同じ食材を何個も買ってくる
・通帳の場所を忘れる
・何度も同じ質問をする
「もう後見制度ですよね?」と不安そうでした。
ただ、よくお話を聞くと、
・年金や生活費の理解はある
・自分で買い物に行ける
・契約内容の説明も理解できる
・家族と意思疎通も取れている
つまり、生活も判断力もまだ保たれている状態でした。
そこで後見制度は使わず、
・通帳は家族が管理
・支払いは一覧表にして見える化
・定期的に家族で確認
この体制だけで、今も問題なく生活されています。
このような「ちょっとした工夫」で十分なケースは本当に多いです。

「様子見」でよいサイン
私が実務でよく見る、まだ急がなくていい状態はこんなときです。
・会話が普通に成り立つ
・お金や生活の仕組みを理解している
・家族のサポートで管理できる
・契約の意味が説明すれば分かる
この段階なら、家族の見守り+サポートで十分対応可能なことがほとんどです。

一方で「そろそろ危険なサイン」もある
ただし、次のような変化が出てきたら要注意です。
・詐欺や訪問販売に簡単に契約してしまう
・お金の貸し借りを覚えていない
・同じ支払いを何度もしてしまう
・通帳や印鑑を他人に渡してしまう
・契約内容を説明しても理解できない
・不動産売却や施設入所など大きな契約が控えている
こうなると、家族の善意だけでは守りきれない段階に入っています。
このタイミングが、成年後見制度を本格的に検討する目安です。

成年後見制度は「転ばぬ先の杖」ではなく「安全ネット」
成年後見制度はとても大切な制度ですが、早く使えば安心、というものでもありません。
どちらかというと「困ったらいつでも使える安全ネット」のような存在です。
だからこそ、まだ歩けるうちからずっとネットの上を歩く必要はありませんよね。
必要になったときに、きちんと使えばいい。
私はそんなふうに考えています。

迷ったら「制度を使う前提」ではなく「状況整理」から
「まだ大丈夫かな…でも心配」このグレーゾーンが、いちばん悩ましいところです。
そんなときは「後見を申立てるべきですか?」ではなく「今の状態って、どの段階ですか?」という相談で十分です。
あいおい事務所では、制度ありきではなく、ご家族の暮らしや気持ちを聞きながら、今いちばん自然な選択を一緒に考えています。
どうぞ気軽に声をかけてくださいね。

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